ペット共生住宅で動物も人も暮らしやすい家に|ポイントや施工事例を紹介
皆さんはペットを飼っていますか?ここ数年、ペットを飼うご家庭が急増しており、元々は人間中心で設計されていた住まいの考え方が変わってきています。「人もペットも居心地のいい住まい」その理念を形にしたのが、ペット共生住宅です。では、具体的にはどのようなスタイルの住宅を指すのでしょうか?そこで、今回はペット共生住宅の基本理念やメリット、プランの工夫ポイント、おすすめの設備などについて解説します。最後には私たちクレアカーサが出がけた施工事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ペット共生住宅の基本理念とは?
ペット共生住宅とは、ただ単にペットと暮らせるということに止まらず、人と動物が無理なく共存できる住まいのスタイルを指します。別名・ペットフレンドリーハウス(ホーム)と呼ばれており、室内飼育に特化した家が増えてきています。間取りはもちろん、使用する内装材や設備機器までこだわり、双方ができるだけストレスを感じないような工夫がされています。また、動物が苦手な来訪者を想定した動線の分離についても考慮されており、「誰でも居心地の良い家」がメインコンセプトです。最近ではUR住宅を始めとした賃貸住宅でもペット共生スタイルを採用している物件が多く、世間からの注目はとても高いと言えるでしょう。
〈関連ページ〉
UR賃貸住宅|ペットと過ごす、とっておきのライフスタイル
コロナ禍でペット新規飼育数は年々増加傾向
ペット共生住宅が改めて注目されているのには訳があります。その原因が、「コロナ禍によるペット飼育家庭の増加」です。
1年以内新規飼育者の飼育頭数は、犬・猫共に2018年を底に、2019年2020年と増加傾向にあり、2020年の増加率は2019年よりも更に高まっている。新型コロナウィルス禍の影響で、ペットとの生活から癒しを求めたり、家族内でのコミュニケーションを深めている傾向がうかがえる。
しかし、残念ながら軽はずみにペットを飼い始めてしまい、住まいや飼い主のライフスタイルへフィットせず、飼育放棄に繋がっているケースも後を絶ちません。この問題は「思ったより世話が大変」という以外にも、「自宅では思うように共存できなかった」という原因が考えられます。
NPO法人みなしご救援隊犬猫譲渡センター東京支部(東京都世田谷区)でも、自宅で過ごす時間が増えたためにペットを購入したものの、「やっぱり飼うのは難しい」と、引き取りの希望が相次いでいる。ペットショップで購入した子犬たちで、それまで、数カ月に1匹のペースだったが、昨年4月の緊急事態宣言以降、週に2匹に増えた。どれも、コロナの感染拡大以降に購入された子犬だった。これまで、30匹以上を引き取った。
可愛いペットと末長く生活を共にするには、やはり住まいへの工夫が必須なのです。そういった観点からも、ペット共生住宅は私たち人間の暮らしにもメリットが大きいとされています。
ペット共生住宅の注意点や配慮する点は?
人にとっては大きな影響を与えないことも、動物には悪影響を及ぼす要因となる場合もあります。環境庁では、近年増加しているペット飼育において注意すべき点を詳細にまとめています。
室内飼いの際に注意しなければならないこと
(中略)
室内の温度、湿度管理
犬や猫は夏場などの高温が苦手です。西日が強く当たるような環境や夏場に留守にするような場合、エアコンをかけるなど、適度な室温、湿度を保つ必要があります。(中略) 床材の配慮
フローリングなどで滑って関節を痛めるなどの事故が起きることがあります。滑る場合に はカーペットを敷くなどして、歩きやすくしてあげましょう。カーペットはよく掃除をして清潔に しましょう。(中略) 事故の防止
犬や猫は、いろいろなものを口にしたり、観葉植物や電気製品をかじったり、物を動かして 高いところにあるものを落としたりと、思わぬ行動による事故をおこす可能性があります。普段からのしつけと同時に、事故を起こさないような室内環境に気を配る必要があります。 タバコや化学物質の影響
タバコの副流煙は人だけでなく一緒に暮らす犬や猫の健康にも悪影響を与える可能性があります。(中略)消臭剤、殺虫剤などの化学薬品にも注意して、犬や猫の近くで使用することは控えましょう。また、スプレーなどをまくと下に溜まりますので、換気を良くするようにしましょう。犬や猫は壁紙の接着剤など、いわゆるシックハウス症候群の原因物質になるようなものに対しても敏感です。(中略) 衛生害虫の発生防止 ノミ、ダニ、ハエなど衛生害虫の発生を防止するため、こまめに掃除を行いましょう。
要約すると、ペット共生住宅における注意・配慮する点は以下の通りです。
・室内の温度・湿度はできるだけ安定させる
・動物が滑りにくく足に負担がかからない床材を用いる
・タバコや建築材に含まれる化学物質に注意する(=材料選びの重要性)
・衛生害虫の発生を防ぐために常に清潔に保つ (=換気の徹底)
これ以外にも、「ペットの安全確保」や「健康管理」は飼い主としての責務であるため、家での危険要因を取り除いたり心身共にストレスをかけないプラン上の工夫は必要です。
ペット共生住宅のココが工夫ポイント!エリア別に解説
では、具体的にはプランなどにどのような工夫を施せばよいのでしょうか。ここではペットの中でも頭数の多い犬・猫に着目して工夫するポイントを紹介します。もちろん犬・猫以外の動物にも共通する点が多いので、ぜひ参考にしてください。
玄関
玄関は来訪者も使うことが多いため、工夫をしなくてはいけないスペースです。主なポイントは下の4点です。
・広めの土間
・足洗い場の設置
・ペット用品も収納できるシューズクローゼット
・脱走防止のためのドアやフェンスの設置
まず、広めの土間はペットが外出から戻ってきた際や悪天候の日に活躍します。自宅に上がる前に汚れた体をきれいにできたり、散歩に出かけられない場合のちょっとした運動スペースにもなります。また、仕上げ材を工夫すれば床の水拭きもできます。
玄関内もしくは外玄関に足洗い用シンクを設置するのもおすすめです。特に、外部に作れば全身を洗う場合や暑い日の水遊び場としても使えます。そして、ペットを清潔に保つ工夫以外にも考慮しなくてはいけない点があります。玄関と隣接している場所からペットが突然脱走することを防がなくてはいけません。そのためにも、玄関を開けた時にペットが勝手に外へ出られないように、適宜にドアやフェンスを設けると良いでしょう。
庭・エクステリア
戸建住宅の場合は、お庭やエクステリア計画にも配慮しなくてはいけません。先ほど紹介した足洗い場以外にも次のようなポイントに着目してください。
・脱出防止の門扉・フェンスの設置
・木陰やシェードの設置
・ペットに負担をかける仕上げ材を使わない
まず、犬がお庭でのびのびと遊べるように脱出防止の門扉やフェンスはしっかりと設置しましょう。外観デザインを重視してお庭の周りを全て囲わないと、脱走して近隣に迷惑をかけたり事故に遭遇してしまいます。樹木やパーゴラを配置して、日陰を作ってあげることも重要です。自ら体温調節ができない犬や猫にとって、熱中症は死に直結します。
■熱中症の症状
急激な体温の上昇(40℃以上)[初期症状]
•呼吸の速拍(口を大きく開けたまま苦しそうに速い呼吸をする)
•よだれ、脱水(よだれにより体内の水分が消失)[そのまま放置してしまった場合]
循環不全や脳・組織の酸欠を起こし、ぐったりする、痙攣、チアノーゼ(舌や歯ぐきが青くなる)を起こす。さらに放置するとショック症状、意識がなくなる ⇒ 死に至る。
外部計画をする上で脱出や熱中症対策を取るだけでは不十分です。ペットが歩き回っても負担がかからないような仕上げにしなくてはいけません。
おすすめできない仕上げ材 | おすすめの仕上げ材 |
コンクリート: 硬くて耐久性がありクッション性がないため、ペットの足腰に負担となります。また、季節によっては高温・低温になるので、人間以上に体への影響が大きいです。タイル:一般的なタイルは滑りやすく硬いため、やはりペットの足腰へ悪影響を及ぼします。また、万が一タイルの上に糞尿をしてしまった場合にシミになる可能性もあります。どうしてもタイルを使いたい場合は、ペット対応商品を選びましょう。 砂利: |
天然芝: クッション性があり、きちんと手入れしておけば怪我の原因になることはありません。また、暑い時期には適度に冷気を保ち、寒い時期にも底冷えしないため、ペットも気持ちよく過ごせます。人工芝:ポリエチレンやポリプロピレン製の人工芝は、天然芝と比べると少々劣るものの十分クッション性があります。また、雨の後にも汚れずに、ノミなどの衛生害虫も湧きにくいため、ペットがゴロゴロと寝転んでも安心です。 ウッドデッキ: |
居室・リビングなど
皆さんもたまに一人になりたい時がありますよね。実は動物も同様と言われています。そのため、どこか人の目に触れない場所に専用スペースを作ってあげると良いでしょう。それは決して個室などである必要はなく、階段下など人間にとってデッドスペースでも構いません。
また、日本には梅雨など長雨が続くシーズンがあり、そういった時期犬が運動不足になる恐れがあります。リビングなどに十分な広さの運動スペースが確保できない場合は、回遊性のある廊下を設けるなど、ペットが自由に室内でも歩き回れる環境を整えてあげることも大切です。猫の場合は、キャットウォークを作るのも効果的です。さらに、日中にペットが外を眺められるように適宜に窓を設けることもおすすめします。
キッチン・洗面所・浴室など
キッチンや洗面所はペットにとって危険がたくさんあります。無闇に洗剤などの薬品や刃物に手が付けられないように、扉付きの収納を設けましょう。また、侵入防止のフェンスやドアを設置することも効果的です。ただし、洗面所は換気システムが整っているお宅が多くペットのトイレスペースを設けるのに適しています。安全を確保した上でトイレスペースの位置を決めましょう。
キッチン・洗面所以上に気を付けなくてはいけないのが浴室です。いつの間にかペットが侵入してバスタブに落ちてしまうと最悪のケースに繋がりかねません。そういった水の事故を防ぐためにも、入り口は押すだけで開けられる開き戸ではなく、動物では簡単に開けられない引き戸にするのも一つの手法です。
その他
全ての空間に共通して工夫しなくてはいけないのが、内装仕上げ材や内装ドア、サッシです。ポイントは以下の通りです。
・床はペットが滑りにくくキズがつきにくい物を選ぶ
・壁はキズがつきにくく、万が一キズがついた場合も目立ちにくい物を選ぶ
・鳴き声が大きいペットを飼う際は、近隣に配慮して遮音サッシを設置する
・衛生環境を整えるために、十分な換気システム(24時間換気)を整える
このように、プラン面での工夫以外にもペットと人間の双方が暮らしやすい住宅にするためにはたくさんの工夫をしなくてはいけません。最近ではペット対応の内装材も増えてきているため、設計士やデザイナーとしっかり打ち合わせを重ねて仕様やインテリアデザインを検討しましょう。
2021年版|ペット共生住宅におすすめの建材&機器
では、ここではペット共生住宅にぴったりの最新建材や設備機器を紹介します。年々デザイン性や機能性が高まっているので、皆さんもきっとお気に入りの商品が見つけられるはずです。
内装仕上げ材
床・壁の仕上げ材は各メーカーが高耐久でキズがつきにくいものや、匂い・汚れの定着や雑菌の繁殖を防ぐ機能が付いているものを販売しています。以前は機能面を重視した商品が多かったのですが、近年は通常の仕上げ材と見た目の遜色がほとんどないものも多く、選択肢もどんどん増えています。一部のメーカーには、ペット対応の天然木製フローリング材もあります。
〈関連ページ〉
リリカラ|ペットと快適に暮らす住まいづくり(壁紙編)
外装仕上げ材
玄関土間やポーチなどの仕上げに使うタイルも、ペットのことを考えた材料を選びましょう。メーカー各社でペット対応のタイルを作っていますが、特におすすめなのがLIXIL・STYLEPLUS(スタイルプラス)です。内床と外床の両方に使えて、滑りにくく汚れやキズが付きにくい表面なのが特徴です。クウォーツ調から木目調など色柄の種類も豊富でコーディネートもしやすいため、ペットのいないお宅でも採用するケースが増えています。
〈関連ページ〉
設備機器
犬を飼っているお宅に欠かせない便利アイテムが「ペット用立水栓」です。散歩の後に足を洗ったり、全身をシャンプーで洗ったりする時に大活躍します。玄関近くなど、使いやすく周囲にゆったりとしたスペースが確保できる場所に設置しましょう。また、エアコンではなく床下冷暖房を設置すれば、乾燥や過度な気温の変化が発生しないため、人にとってもペットにとっても快適な空間になります。
〈関連ページ〉
内装ドア
従来は、ペットが室内を自由に行き来できるようにドアを開けっ放しにしなくてはいけませんでしたが、現在は各メーカーがペット用のくぐり戸付き内装ドアを多数販売しています。その多くは耐傷性の高い化粧シートを使用しているため、キズは付きにくいという点もメリットです。最低でもペットが行き来する範囲のドアはペット対応タイプを検討してみてください。
〈関連ページ〉
その他
大建工業(DAIKEN)では、犬・猫が喜ぶ壁面造作システム部材やシステム収納を販売しています。壁付けの通り道や、隠れ家となるボックス部材、デッドスペースをペット専用のくつろぎ空間にできる収納など、他メーカーにはないオリジナリティある商品が多いので、気になる方はぜひ一度検討してみましょう。
〈関連ページ〉
施工事例
私たちクレアカーサでは、今まで様々なペット共生住宅を作ってきました。その中の一部を紹介します。
広い土間は雨の日でも犬が使えるくつろぎスペースに
こちらは平屋タイプのペット共生住宅です。玄関とリビング、外部のウッドデッキに隣接した広々とした土間が特徴です。天気のいい日は窓を開け放って室内外をつなぐ中間領域として使えますし、悪天候の日はペットの運動スペースとして活用できます。また、トリミングやブラッシングなどのお手入れをするのにも便利です。部屋の汚れを気にせずペットをのびのびとさせてあげたい方は、ぜひ広い土間の採用を検討しましょう。
〈関連ページ〉
クレアカーサ|施工事例・ペットと暮らすスキップフロアのある平屋
〈関連コラム〉
クレアカーサ茨城|コラム・土間で暮らしがおしゃれ&快適に|活用方法やメリット・デメリットを解説
床下冷暖房やドッグランのある家
こちらは床下冷暖房システムを採用したお宅で、部屋ごとの室温差がほどんどなく空調機器による乾燥の心配がありません。また、庭に面したタイル張りのサンルームや、フェンスで囲われたドッグランスペースなど、犬がストレス発散したりリラックスできる工夫が随所に盛り込まれています。中型以上の犬と暮らす家を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
〈関連ページ〉
クレアカーサ|施工事例・床下冷暖房で一年中快適 愛犬と暮らす自然素材の家
まとめ|ペット共生住宅は動物と人双方が快適に暮らせる住まい
今回は、ペット共生住宅の基本理念やメリット、プランの工夫ポイント、おすすめの設備などについて解説しました。ペットを飼うご家庭が増えている現代において、ペット共生住宅という形は当たり前になりつつあります。ペットを愛玩動物として扱うのではなく、家族の一因として捉えることが大切です。人間も動物も暮らしやすい住まいを作ることは決して難しくはありません。既にペットと暮らしを共にしている方も、将来的にペットを飼いたいと思っている方も、ぜひポイントを理解した上でペット共生住宅をご検討ください。クレアカーサでは、経験豊富な設計スタッフや施工スタッフがチーム一丸となって、あなたの理想のマイホーム作りをお手伝いいたします。
クレアカーサ茨城があなたのペット共生住宅づくりをお手伝いします
私たちクレアカーサは「Good House, Love Family」をメインコンセプトとし、一番近くにいる人を幸せにできる住まいづくりをめざしています。また、家事動線や収納計画、敷地の効果的な活かし方をお客様と密にお打ち合わせすることで、デザインや流行に捉われすぎない住み心地の良いお住まいをご提案します。ホームページからイベントや来店のご予約、資料請求を承っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
〈参考ページ〉