パッシブデザイン住宅とは?メリット・デメリットやアクティブデザインとの融合について
環境に配慮した設計手法のうちのひとつに「パッシブデザイン」という考え方があります。
住宅情報誌などで取り上げられることも増えたので、気になっている方も多いでしょう。
そこで今回は「パッシブデザイン住宅」について、基礎知識からメリット・デメリット、アクティブデザインとの融合について解説します。
クレアカーサがこれまで手がけた省エネ住宅・ゼロエネルギー住宅の施工事例も紹介しますので、ぜひマイホームづくりの参考にしてください。
コラムのポイント
● 「パッシブデザイン」とは設備や電力に頼らず自然エネルギーを受動的に活用して、快適な住環境をつくり出す設計手法です。
● 「パッシブデザイン」だけでは十分な効果を得られない可能性もあるため、能動的に自然エネルギーを活用する「アクティブデザイン」も取り入れる住宅がおすすめです。
● クレアカーサは千葉県でスタイリッシュ&高性能な省エネ住宅・ゼロエネルギー住宅(ZEH)を数多く手がけています。
パッシブデザイン住宅とは?パッシブハウスとの違い
【施工事例:スケートボードパークのある 平屋のサーファーズハウス】
「パッシブデザイン(passive design)」とは、直訳すると「受動的デザイン」です。
建築においては「自然エネルギーを受動的に活用する設計手法」を指します。
具体的には機械設備や電力・ガスなどのエネルギーに頼らず、太陽光や自然風などをコントロールして快適な住空間を作り出すことを目的とし、以下のような方法が採用されます。
- ● 高気密高断熱性を高めて外気温の影響を抑える
- ● ヒートブリッジをなくす(※1)
- ● 季節によって日射を取り入れたり遮ったりできる庇計画(※2)
- ● 室内の通風効果を高める窓計画(※3)
- ● 基礎断熱と地熱利用を取り込み(蓄熱し)、冷暖房へ生かす
※1 ヒートブリッジ:熱橋とも呼ばれ、建物において特に熱の出入りしやすい場所を指します。局部的に熱を伝えてしまうため、断熱性能の低下をもたらします。
※2 庇(ひさし)計画:高度の高い夏の日差しは遮り、高度の低い冬の日差しは取り入れることで、冷房・暖房負荷を減らします。
※3 窓計画:部屋内の窓を対面に配置したり、温まった空気を効率的に排気できるハイサイドライト(高窓)を採用したりすることで、室内に自然風の流れが生まれます。風を感じると体感気温が下がるため、冷房使用量を減らせます。
このように自然の力を極力生かして快適な住み心地の室内環境を作り上げ、ひいては省エネ性を高めることこそ、パッシブデザインの目的です。
パッシブデザインと混同されることがあるのが「パッシブハウス」です。
パッシブハウスも基本的なコンセプトはパッシブデザイン住宅と変わりません。
ただし、パッシブハウスは環境先進国であるドイツの物理学者ファイスト博士によって提唱された省エネ基準を全てクリアしている住宅を指します。
つまり設定されている数値基準をクリアしていない住宅は、パッシブハウスとは呼べないのです。
そのため日本国内の施工事例は限られており、2009年に日本初のパッシブハウスが誕生してから2022年までで数十棟にとどまっています。
対して、パッシブデザイン住宅は数値基準はなく住宅の一部でもパッシブデザインを取り入れている住宅も含まれます。
そのため、より新築のハードルが低い省エネ住宅の形と言えるでしょう。
パッシブデザインのメリットと効果
【省エネ住宅施工事例:プライベートサロンのある スクエアフォルムの家】
パッシブデザイン住宅は日常生活において快適性や健康面、ランニングコストなど多方面のメリットがあります。
機器に頼らないため、故障や効率低下による環境低下のリスクが低く、室温環境をある程度一定に保てます。
室内環境を快適に保つ目的では企業から買う電力やガスなどの人工エネルギーに頼らないため、光熱費を減らせます。
空調機器に頼らず温度を保てるため、停電時に急激に温度環境が悪くなる可能性を抑えられます。
省エネでCO2の排出量を抑える効果もあり、地球環境問題解決にも貢献できます。
設備機器に頼る住宅の省エネ住宅よりも普遍的に効果を維持しやすいため、持続可能性(サスティナビリティ)が高く、SDGs実現につながります。
このように、パッシブデザイン住宅は長きに渡り省エネ効果を維持できる点が強みと言えるでしょう。
パッシブデザインにはメリットが多い反面、立地環境によって大きな効果を得られない可能性があるなどのデメリットもあります。
そのため、パッシブデザイン住宅を後悔しないためには事前にデメリットや注意点とその対策を知っておくことが重要です。
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パッシブデザインのデメリット・注意点
【省エネ住宅施工事例:サーフ×リゾート 心身を解きほぐすセカンドハウス】
パッシブデザイン住宅には、様々なメリットがあり「住む人にも地球にも優しい家」として認知されてきています。
ただし建てる前に知っておいていただきたいデメリットや注意点もあります。
パッシブデザインの効果を高めるためには断熱性能をトップクラスのグレードにする必要があるため、材料費が高くなります。ただし長期的に見ると光熱費削減などコスト面でのメリットがあるため、決して損とは言い切れません。
太陽の高度が低い冬でも日射熱を取り入れるには、南面の敷地に余裕が必要です。ところが、周囲に建物が密集している地域では、家と家の間の風通しが悪い可能性があります。そのため十分な採光・通風を得るためには、広めの敷地であることが望ましいとされています。
四季の温度差が大きい地域や極寒地域では、受動的な自然エネルギー活用だけでは快適な室温を保てないため、補助的にエアコンやガスファンヒーターを使わなくてはいけません。
湿度の高い日本では、温度を数度下げるだけでは涼しさを十分に感じられない可能性があります。
“高断熱”と表記されている住宅でも、建築会社によって性能に差があるため、パッシブデザインの効果を得られない可能性があります。
パッシブデザイン住宅を後悔しないためには、高品質な性能を持つ省エネ住宅を多く手がけている建築会社へ相談しましょう。
またパッシブデザインだけではなく、能動的に自然エネルギーを活用するアクティブデザインも取り入れたプランを検討することも大切なポイントです。
家づくりを後悔しないためにはアクティブデザインとの融合が鍵
【省エネ住宅施工事例:片流れの美しいシルエット 土間のある平屋の家】
環境に優しいパッシブデザインは、周辺環境やライフスタイルの変化によって当初のシミュレーション通りに効果を実感できない可能性があります。
そこでおすすめなのが「アクティブデザインとの融合」です。
「アクティブデザイン(active design)」とは、直訳すると“能動的なデザイン”という意味で、設備機器の工夫によってエネルギーの消費量を減らしたりつくり出したりする設計アプローチを指します。
- ● 太陽光発電によって電力を“自給自足”する
- ● 太陽熱利用温水器を使い、給湯や空調にかかる消費電力を減らす(※1)
- ● ヒートポンプ給湯機(エコキュート)を使い、消費電力を減らす(※2)
- ● 家庭用燃料電池(エネファーム)を使い、クリーンなエネルギーをつくり出す(※3)
- ● 最新の省エネ家電へ買い替え、消費電力を減らす
- ● 全熱交換器(全熱交換気)システムを用いて、換気時の空調エネルギー損失を抑える(※4)
※1 太陽熱利用温水器:屋根に設置した集熱器と貯湯槽が一体となっており、太陽熱で水をお湯へ温める設備です。給湯に電力やガスなどのエネルギーを使わず、床暖房にも利用できます。
※2 ヒートポンプ給湯機:空気中から回収した熱エネルギーや夜間電力、太陽光で発電した電力を使って貯湯ユニット内の水を温め、それを必要な時に使う給湯設備です。
※3 家庭用燃料電池:都市ガスやLPガス等から水素をつくって、その水素と酸素の化学反応によって発電する設備で、発電時に発生する熱を利用して給湯もできる省エネ設備です。
※4 全熱交換器(全熱交換気)システム:換気時に冷暖房エネルギーを一度回収し、外気を取り込む際にそのエネルギーを戻して室内へ送り込むため、熱損失を最小限に抑えて空気の入れ替えができます。
つまり、アクティブデザインはパッシブデザインのように電気に頼らない方法ではなく、消費エネルギーを減らし、自分で使うエネルギーをつくり出す手法となります。
どちらも「住宅の省エネ性を高める」という最終目的は同じなので、それぞれの良いところを組み合わせることが重要と言えるでしょう。
最近は、アクティブデザインを取り入れた省エネ住宅であるZEH(ゼロエネルギー住宅)へパッシブデザインの要素を取り入れたハイブリッドな住宅「パッシブZEH」の事例も増えています。
「パッシブZEH」とは、パッシブデザインで消費エネルギーを抑え、さらに高性能設備によって省エネ性・創エネ性を高め、その住宅単体における消費エネルギー量を“プラスマイナス・ゼロ”にする住宅を指します。
パッシブデザインによって、省エネ性だけではなく快適で健康的な暮らしを送れる理想的な住宅の形です。
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パッシブZEHの施工事例|間取り・デザイン・性能
クレアカーサでは、これまで多くの省エネ住宅を手がけてきた実績があります。
その中から、パッシブデザインを取り入れたZEHの事例を紹介します。
大好きなインテリアに囲まれた アメリカンスタイルの平屋
【省エネ住宅施工事例:大好きなインテリアに囲まれた アメリカンスタイルの平屋】
こちらは、広々としたカバードポーチを日差しの強い南面へ設けることで、室内に差し込む日射量をコントロールしています。
暑い日でもリビングの窓を開け放てば、木陰にいるような自然の風を感じられる心地よい空間になります。
もちろん、窓を閉め切れば、高断熱性能によって空調エネルギーを長時間キープできる点もポイントです。
太陽が似合う リゾートスタイルの家
ダイナミックな吹き抜けは開放感が格別です。
ところが、空調効率が悪くなる点は否めません。
しかし、気密性に優れた住宅なら、室内容積の大きな空間でも室温ムラを抑えられ、アクティブデザインによって最小限のエネルギーで空調できます。
青い海を望む天空のリゾートハウス
こちらは敷地の高低差を利用した高台に建つ事例です。
周囲に日差しを遮る建築物がないため、北向きのリビングでも日中は太陽の光に包まれます。
南北に風が抜ける窓配置にこだわり、天気の良い日は室内にいても自然風を感じられる間取りにしました。
クレアカーサではお客様のご要望や敷地の条件に合わせた様々なスタイルのZEH(ゼロエネルギー住宅)を設計施工しております。
「気になる敷地があるがZEHが建てられるか分からない」「パッシブデザインを取り入れた心地よい省エネ住宅を建てたい」という方は、省エネ住宅のプロであるクレアカーサへお気軽にご相談ください。
▶︎クレアカーサのZEH(ゼロエネルギー住宅)施工事例はこちらから
まとめ
「パッシブデザイン」は設備や電力に頼らずに快適な住環境をつくる設計手法ですが、メリットを確実に得るためには、敷地や地域の条件が限定されます。
そのためパッシブデザインを取り入れつつ、太陽光発電システムや高性能設備を取り入れた能動的な省エネアプローチである「アクティブデザイン」と融合させるプランがおすすめです。
最高峰の省エネ性を実現できるZEH(ゼロエネルギー住宅)とパッシブデザインを組み合わせた「パッシブZEH」の事例も増えています。
省エネ性の高い住宅を建てたい方は、施工実績の豊富な建築会社へ相談しましょう。
私たちクレアカーサ(株式会社日立プロパティアンドサービス)は、千葉県茂原市にある建築会社です。
デザイン性と省エネ性の両方を備えた「ゼロエネルギー住宅(ZEH)」の普及へも積極的に取り組んでいます。※2023年度のZEH普及実績は83%
「デザインも性能もコストも諦めたくない」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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監修者情報 クレアカーサコラム編集部
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家づくりに役立つ情報をお届けしています。
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・資格情報
・執筆出演
・受賞歴など
住宅業界の専門性について
免許登録
- 建築士事務所登録番号 千葉県知事登録 第1-1907-7917号 公益社団法人 千葉県建築士事務所協会
建設業許可番号 国土交通大臣 許可(特5)第29052号 国土交通省
宅建業免許証番号 国土交通大臣(15)第810号 国土交通省
資格情報
- 一級建築士、二級建築士、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士、
宅地建物取引主任者、インテリアコーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士他
受賞歴
- ・ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー 優秀賞を2シリーズでダブル受賞
・三協アルミ ワンダーエクステリアデザインコンテスト2019 ブロンズデザイン賞
・ZEHビルダー評価制度で最高ランクの6つ星を取得 等
- 建築士事務所登録番号 千葉県知事登録 第1-1907-7917号 公益社団法人 千葉県建築士事務所協会